2人用ボイスドラマ台本
吸血鬼(男)と吸血鬼(女)

配役

・吸血鬼(女)
・吸血鬼(男)


***

01女:はじめて見たときにね、絶対にイケメンになると思ったの
01男:生まれたての赤ん坊でわかるもんですかね
02女:わかるわよ。だてに長生きしてないわ
02男:にしたって、忌み子だと言われている赤ん坊を拾うなんて、あなたも本当に物好きですよね
03女:忌み嫌われるということなら、あたしだって負けてないわよ
03男:そこ、張り合うところですか
04女:いいじゃない。嫌われ者同士、仲良くやりましょ。
   それにほら、あたしの目に狂いはなかったわけだし。ふふ、やっぱりイケメンだった
04男:ご期待に添えましたかね
05女:もう、ばっちりよ。あたし好みのイケメンに育ってくれてうれしいわ
05男:それはよかった。でもほんと、いきなり喉元に噛みつくのはどうかと思うんですよ。
   あなた、そんなことしなくても血を吸えるでしょうに
06女:普段はね。でも“儀式”のときは直接いかないとダメなのよ。
   直接、あたしの牙を使う必要があるの
06男:だからって、断りなしに噛みついてくるのはどうなんです?
   それとも、おれが拒否するとでも思ってたんですか
07女:思ってないわ。言ったでしょ、だてに長生きしてないのよ
07男:だったら
08女:でもね、あたし決めてたの。
   あなたに儀式をするときは、あなたのここに、噛みついてやるんだって。
   だってほら、見上げるとちょうどいい場所にあるんだもの。
   あんなに小さかったのに、いつのまにか大きくなった生意気な子どもの躾には、ちょうどいいでしょう?
08男:躾もなにも、逆らえないように育ててきたのはあなたでしょう
09女:ふふ、冗談よ。ただここがあんまり色っぽくて、噛みついてやりたくなった、それだけよ
09男:そんな理由で、おれは人間をやめるはめになったわけですか
10女:そうよ。不運だったわね。
   あなたが思ったよりもイケメンに育たなかったら、ここまで色っぽくならなかったら、
   あたしは生涯の伴侶にあなたを選びはしなかったわ
10男:そうですか。なら、おれの努力も無駄にはならなかったわけだ。
11女:それってどういう
11男:そのままの意味ですよ。おれは、あなた好みの男になったでしょう?
12女:……まったく、生意気な子だこと
12男:勝手はお互い様ですよ。さあ、そろそろここを離れましょう。
   さすがにこれだけの人数じゃ、すぐに騒ぎになります。ようやく腹もいっぱいになったことですし
13女:まさか村人全員、吸い尽くすとは思わなかったわ。よほどお腹が空いていたのね
13男:自分でもびっくりですよ。いくら食っても、満腹にならなかったんです。
   でもようやく、最後のひとりになったときに、もういいかなって。これで全員、ですもんね
14女:そうよ。あなたを忌み子だといって捨てた村の人間は、これで全部
14男:あっけないもんですね、人なんてものは
15女:そうよ、だから気にすることないのよ
15男:気にしてませんよ、べつに
16女:そう? じゃあ、もうここに用はないわね。行きましょうか
16男:まずはどこへ行くんです?
17女:あら、そんなこと決める必要、あるかしら
17男:……いいえ、ないですね
18女:でしょう?
18男:ええ、あなたとならば、どこへでも
***

吸血鬼(男)の1人用はこちら
吸血鬼(男)の1人用BL版はこちら
- copyright © 2018 uki. All rights reserved. -
inserted by FC2 system