1人用ボイスドラマ台本
吸血鬼(男)

配役

・吸血鬼(男)



***


いやね、おれもまさかいきなり噛みつかれるなんて思ってなかったわけですよ。
しかも喉元でしょ。
やられた瞬間、あ、これおれ死んだなって思いましたよ正直。
だって考えてみてくださいよ。
ふつうに生きてて、あるときいきなり喉元に噛みつかれるなんてことあります?
いやいやないですって。
しかもあなた、長年信頼してた人にですよ。
ええ、そりゃもう信頼してましたよ。
なにしろおれを拾って育ててくださったわけですし。
まあね、忌み子だなんだと捨てられた赤ん坊をね、
なんの見返りもなく引き取るあたり、ふつうじゃないなとは思ってましたよ。
でも世の中変わった人も多いですし、あなたもね、その部類だと思ってたわけですよ。
あ、痛い痛い。蹴らないでください。
いやでもまさかね、育ての親が吸血鬼だったなんてね、誰が想像つきますか。
夢にも思いませんでしたよ、まさか自分までもそうなってしまうだなんて。
いえ、べつに恨んだりなんてしてませんよ。
おれは捨てられた時点で一回死んでますから。
それをあなたが拾ってくれた。
だからおれの命はあなたのものです。どうしてくれようと構わないんですよ。
いやでもね、「好みの男になるまで待ってた」なんて言われる日がこようとは。
いつのまにかあなたの背を追い越してはいましたけどね。
ええ、もちろん光栄ですよ。
だって、あなたと歩く永遠の道を約束された、そういうことなんでしょう?
本当はいつか、おれのほうから言う予定だったんでね、先を越されてしまいました。
なにを驚いた顔をしているんです?
あなたが鈍感なことは知っていましたが、本当に気づいていなかったんですか?
まったく、あなたという人は。
いいんですよ、そんなあなたに生涯付き合えるのはおれくらいのもんです。
さあ、では行きましょうか。
手始めに食事、しましょうよ。
おれ、腹ペコなんですよね。
***

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