1人用ボイスドラマ台本
吸血鬼(男)BL版

配役

・吸血鬼(男)



***


いや、まあ、死んだと思ったよね、ふつうに。
だって首に噛みつかれたらさ、そう思うじゃん?
がぶーってやられたときに、あ、これはおれ死んだなって、正直なところ。
いくら自分より背の低い相手でもさ、首元やられたら思うわけですよ。
油断してた、ってのもある。
いやだって、まさかそんなことされるなんて思わないじゃん。
にこにこーっていつも笑ってて、犬っころみたいにじゃれついてきて。
よしゃしゃしゃー、かわいいなこいつーってなるじゃん。
たとえそれが男だとしても、懐いてくる相手ってのはかわいいもんじゃん。
だからおれも、悪い気はしなかったわけですよ、好きだって言われたら。
まあだからといって、応えてやれるわけでもなかったんだけど。
かわいいとは思ってたしいい奴なのはわかってるけど、でもそれだけだし。
おれにとってそれ以上でもそれ以下でもなかった。
だからごめんなって、でもありがとなって。
受け取れはしないけど否定もしない。
それで終わり、のはずだったんだけどねえ。
まさかその直後、がぶーっとやられるとは思いませんでしたわ。
いやそれよりもあれか。
まさかお前が、いわゆる吸血鬼だったなんて夢にも思わなかったって話よ。
そもそもそんなもんが存在してたってこと自体、今でも信じられないっつーか。
うん、まあ自分がそうなっちまってるんだから信じるも信じないもないわけだけど。
お前が噛みついてきたとき、正直おれ死んだと思ったし、そう覚悟した。
ある意味で生まれ変わってるわけだから、まあそれも間違っちゃいないのかもな。
おれはいっぺん死んだ。でも今生きてる。
さっきまでのおれは死んで、今新しいおれが生きてる。
だから、まあ、もしかしたらこの先、お前のこと受け入れるときがくるかもしんねえ、とだけ言っとくわ。
なにしろそう簡単には死なない体ってやつになっちまったわけだからな。
気が遠くなるくらいの年月をひとりでいるってのは、まあ無理だろうし。
とはいっても、すぐにはないからな。
こうなった以上責める気はねえけど、おれの許可なく勝手に噛みついてきやがったのはお前だからな。
お前にはお前の言い分があるだろうけど、おれにだってあるんだからな。
だから、まあ、しばらくおれは好きにやるからお前もちょっとは反省しろ。
おれが女のとこ行っても許せよ?
しばらく遊んだら戻ってきてやるから。
自分でも不思議だけど、怒る気にはならねえんだよ。
びっくりはしたけど。
だから、まあ、気長に待ってろよ。
おれらには永遠の時間がある、だろ?
***

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